＜5＞

ミミは光子郎に強くしがみつく。
その行動に驚き、思わず引き離そうと光子郎はミミの肩をつかむ。
「いやっ！！」
引き離される恐怖にミミは叫ぶ。
「あたし…。」
ミミが何を言いたいのか、光子郎は察す。
自分を見上げ、小さく震えるミミ肩を優しく抱きこむ。
「…まさか、自分がそうなるとは思いませんでした…。」
ミミは動けない。ぬくもりを離せない。
「時間なんて、関係ないんですね。」
ひそかな予感に、ミミは光子郎の服を握り締める。
「一目ぼれって言ったら…信じてくれますか？」

うれしさのあまり、ミミは光子郎の胸に顔をうずめる。
「――ミミさんが、好きです。」
「アタシも。光子郎さんが好き。例えどんな人であっても…。」
お互いに強く抱きしめあう。
いくら抱き合っても足りなかった。
星が海へ落ちる。
ふと、光子郎がミミのほほに触れる。
ミミが顔を上げ、光子郎を見つめる。
そのまま二人の顔が近づく。

家に向かう車の中で、光子郎はとんでもない事をミミに言った。
「お見合い、受けてごらん。嫌だったら断ればよいのだし。」
「…どうして！？」
前を向いて運転している光子郎の顔を、信じられない気持ちで見つめる。
「社会経験ですよ。ミミさんの意思ははっきりしているのでしょう？」
「そぉーだけどぉー。」
ミミは正直、気が進まなかった。
光子郎を裏切るような気がしたし、相手の人にも悪いような気がしたのだ。
「お父様も大変みたいですし…。」
ミミはパパのことを考えると、無碍にはできなかった。にこやかに笑う光子郎に
引っ掛かりを感じながらも、しぶしぶ承諾をした。

後日、お見合いの席で太刀川ミミと泉光子郎は出会った。