＜5＞

病室のドアが閉まる。
点滴を指されたままで、ベットの上でミミは眠っていた。
いろいろなコードが体から、ベットの脇の器具へ伸びている。
食事が取れないからだろう。記憶の中のミミより、少しやせているのを光子郎は感じた。

かすかに上下する胸部。
そして―
顔はまぎれもなく、良く知ったミミの顔だった。
ベットの脇へそっと近づく。
「…ミミさん、探しましたよ。」
ミミはただ眠っている。起きる気配はなかった。

「ようやく見つけました。僕の事、覚えていますか？」
静かに眠るミミを見つめながら、光子郎は語りかける。
「忘れているなら、何回だって伝えます。僕は貴方が好きです。…心から…。」
ベットの脇の椅子に座り、ミミの手をそっと握り締める。
「だから、起きてください。そして僕を見て、僕の名前を呼んでください。」
光子郎の肩が震える。ミミの手を強く握り顔を伏せる。
「…お願いですから…。」

光子郎の心底からの呟きとともに、デジヴァイスが光る。
「え？」
デジタルワールドを救ってから、全く反応もしなかったデジヴァイスが光りだした。
ポケットに入れておいたそれを、光子郎は取り出した。
何かと共鳴するように、光は強さを増す。

ふと顔を上げると、ミミの胸元も光っていた。
「共鳴している？」
デジヴァイスを握り締め、光子郎はミミの顔を覗き込む。
かすかにミミのまぶたが動いた気がした。
そのまま光子郎はミミの顔に近づいた。

光子郎がゆっくり顔を離すと、ミミはゆっくり目を開けた。
「こ…し、ろ…くん。」
長い間、喋っていなかったため、かすれる声。
それだけでも光子郎にとって、十分だった。

ミミを見つけれらた事。
ミミが目を覚ました事。
ミミが自分の名を呼んだ事。
ミミが自分を覚えていた事。
今までの苦しさは十分報われた。

「ずっと探していたんですよ。もう、離しません。」
細いミミの身体を、やさしく包み込む。

「全部、夢でみてたの、覚えてる。やっと、会えたね。」