＜3＞

リアルワールドに帰ってきてから、６ヶ月が経とうとしていた。
窓の外はすっかり新緑の季節になってしまっていた。
木々の緑は彼女のカラー。

意気込んで探し始めたのは良いが、探し人らしき情報は全く入らなかった。
皆で手分けして回った病院にも、苦労して入手した患者リストにも、ミミの名前はなかった。
…もしかしたら、名前がちがうのだろうか。
時折入る、ゲンナイさんからのメールを頼りに、選ばれし子供たちは捜していた。
大切な仲間を。

丈は院内を見学していた。
自分の取るべき道が、なんとなく見えてきたような気がしたのだ。
――僕は医者になるべきなのかも、しれない…。――
太一や光子郎は、デジタルワールドのために、活動しようとしている。
「デジモンたちに、医者はいなかったよな…。」
データ体といっても、傷ついたり、怪我をしてり、風邪だってひくようだ。

思い巡らせていたので、最初、その札を見たときは何か、わからなかった。
「た…大変だ！」
廊下で大声で叫び、ばたばた走り出すと言う迷惑行為を、丈はおこなってしまうほどに
慌てていた。

ミミが見つかった。

その知らせは、３０分のうちに皆に伝わっていた。

『どうする？光子郎。』
太一が光子郎に連絡をしたのは、正解だったようだ。
第一発見者である丈であれば、光子郎は質問攻めにしていただろう。
やり場のない感情が、光子郎の中に渦巻いていた。
パニックしている光子郎を太一はなだめるのに苦労していた。
『落ち着けって。丈も病室の札を見ただけで会っちゃいないし、確認も取れてないんだ。
お前がつらいなら…。』
「いえ、僕が会いに行きます。」
いろんな感情を整理しても、残るのはミミに会いたいという気持ちだけだった。

電話を切った後、手が震えている事に気づく。
会った瞬間、すべてが終わってしまうかもしれない。
ミミは記憶を共有しているはずだ。でも、もし、覚えていなかったら…！？
光子郎の精神はかなり圧迫されていた。
「…いけない、こんな気持ちでは…。」

シャワーを浴び、気持ちを落ち着かせる。
新しい服に着替え、外に出る。
手にはデジヴァイスを握り締めて。