マリブブルー

デジタルフィールドの反応を見つけた。
健良がテリアモンと駆けつけた時はすでに、留姫とレナモンによるバトルが繰り広げられていた。
「ねぇ、ジェン。僕も戦った方が良い？」
デジヴァイスを握り締めたままの健良に、テリアモンは尋ねた。
「いや…、少し様子を見よう。」

何かがおかしかった。
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留姫の動きもレナモンの動きも、いつもに比べ、遅く感じる。
いや、レナモンは普通だが、留姫の指示が遅い。
動きが遅いようだ。
そんな留姫をかばいながらの戦闘で、レナモンは動きづらそうなのだ。

状況はかなり劣勢だった。

「！テリアモン、ここから攻撃だ！」
「ん、わかった～。」

テリアモンはフィールドの中心に向けて、プチツイスターを放った。

「テリアモン！ジェン！」
その攻撃に、レナモンが気づく。
「ジェン。中に入ってくるな。このデジモンはテイマーを攻撃する！留姫が…！！」
レナモンの声を聞き、やはりと健良は自分の作戦をテリアモンに伝える。
「テリアモン、いいかい？まず、進化して高速プラグインＳ。留姫をフィールドの外に
出してから、各自戦闘だ。僕らは中に入れないから、自分で戦うしかないんだけど…。」
健良の言葉に、テリアモンはうなずく。
「モーマンタイ。レナモンにも伝えるよ。」
テリアモンは進化するとガルゴモンとなり、高速プラグインＳをうけ、フィールドの中に
消えていった。

「留姫…。」
健良は思わず呟いた。
フィールド内は霧のため、外からではよく見ることが出来ない。
「怪我とかしていないといいんだけど…。」

「ジェーン！」
ガルゴモンが留姫を抱えて走ってくるのが見えた。
後１歩でフィールドの外、というところで、敵の攻撃が二人を襲う。
「留姫！！ガルゴモン！」
「ジェン！！」
ガルゴモンはとっさに、留姫を放り投げた。
敵の攻撃から留姫を守るために。
「る、留姫！」
あわてて健良はその身体を受け止めた。

ーやわらかいー

思ったとおりに軽い留姫の身体は、健良の腕の中に収まった。
「ガルゴモン、気をつけて！」
「モーマンタイ！レナモンも無事だよ。」
そういうとガルゴモンはフィールド内に戻っていった。

「…ェン…。」
留姫の瞳が健良を映す、が、体がしびれているようで、動けないようだ。
健良は思わず留姫の手を握り締める、と、その手がピクリと動き始めた。
「え？」

ーまさか、この麻痺は…ー

健良が留姫の腕をさすると、かすかに動きを取り戻したようだった。
「やっぱり…麻痺は外からの刺激で解けるんだ。…だったら！」
健良は留姫を抱きしめ、マッサージをおくる。

ー役得…かな？ー

邪な心がないとは言い切れないので、後ろめたかった。
麻痺が解けかかっている留姫の唇がかすかに動く。
が、言葉をつづるまでにはいたらないようだ。

「…ごめん、ね？留姫。」
一応、声をかけて、健良は己の唇を近づけ、深い口付けを送る。
舌の機能も麻痺しているようなので、刺激を与えるため、絡める。

ー留姫のためー

そう、思いながらも、その中に自分の欲望があるのは認めざるを得なかった。
健良はいつしか、留姫から与えられる柔らかさに夢中になっていた。

ー離したく、ないー

ピクリと留姫の手が動いた。
その手はゆるやかに持ち上げられ、健良の頬にあたる。
軽くあたっただけだが、健良が我に返るには十分だった。
慌てて身体を離す。
苦しそうに息をつく留姫の瞳は潤んでいた。
「…ごめ…。」
その様子に、自分がどれだけひどい事をしたか感じる。
留姫のためではなく、自分の欲望に走ってしまったのだ。

「…ば、か…。」
ちいさく留姫が言葉を返す。
その言葉の中に拒否がない事を感じとり、健良は強く留姫を抱きしめた。

「…頼むから、一人で戦おうとしないで…僕にだけは本当の留姫を見せて…？
もっと、甘えていいんだよ？」
「…ジェン…。」

健良の言葉に留姫はわかったというように、微笑んだ。

「留姫…。」
その微笑に惹かれるように、健良はまた顔を近づけた。

パシン

「それ、と、これ、とは別っ。もう、平気だから、離れなさいよ。」
真っ赤な顔をした留姫は、健良の行動を止める。
「残念だなぁ。」
と、健良が呟いたのを留姫は聞き逃さなかった。
身体を出来るだけ健良から離しながら、留姫は釘をさした。
「ちょっと！今度無断であたしにさわったら許さないわよっ。」
「はいはい。」

すっかり麻痺も取れ、元気になってしまった留姫を残念に思いつつも、
健良はやさしく見つめていた。

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