好きなものの食べ方
やだ、なんにも考えられなくなる…。
「っん…や…。」
吐息がもれる。
やだ、なんだか自分の声じゃないみたい。
手を光子郎くんの背中に回すように、引っ張られる。
力が、入らない。
なされるがままに、光子郎くんの背中につかまる。
「ふっ……。」
ようやく唇が開放される。
ぽーっと、光子郎くんを見つめる。
駄目、何も考えられない。
そんな様子のあたしを見て、光子郎くんはくすりと笑い、耳元へ口を寄せる。
「その状態で誘ってない、なんて言うんですか？充分色っぽいのに。」
首筋に口付けられる。
「ふっ…いやぁ…。」
思わず、強くしがみつく。
光子郎くんってば、ずるい。
アタシがそこ、弱いの知ってて…。
体の奥が熱くなる。
「……し、ろの…バ、カ…。」
吐息交じりの声になる。文句をいっても、全然駄目。余計嬉しそうな顔をしている。
「僕にそんな事をいえるのは、ミミさんだけですよ？」
…だから、耳元でしゃべらないでよ！わかんなくなっちゃうから…。
熱が体中をかけめぐる。
切なげな視線を光子郎くんに送る。
わかってくれるよ…ね？
「さて、お腹もすきましたし、帰りますか？」
「…え？」
熱をもてあましつつ、ぽーっとしていたアタシは光子郎くんの台詞が理解できなかった。
「うちで食事、していくでしょう？…どのみち、その状態じゃ、家まで帰れないでしょうから。」
くすくす笑いながら、手が伸びる。
「やっ……！」
「ほら、こんなになって。」
一気に顔が赤くなるのが、わかる。
悔しいけど、何もいえなかった。
確かにお腹もすいてるけど…。
体の熱は、収まりそうになかった。
かぎを開けて、光子郎くんの家に上がる。
「お邪魔します。」
今日はご両親は帰らないって…。
「とりあえず、僕の部屋へどうぞ。」
「うん…。」
荷物を置くために、光子郎くんの部屋に入る。
と、同時に強く抱きしめられる。
「きゃ！」
「ミミさん…。」
少しずつ、光子郎くんの手が、体のラインをなぞる。
「ご飯…食べるんじゃ…。」
「先に好きなものから頂く主義なんです。」
…ずるい。アタシが逆らえないの、わかってて…。
そのままベットへ押し倒される。
「ん…。」
口付けを受けながら、光子郎くんの背中に手をまわす。
ゆっくり服を脱がされる。
「ミミさん、いいですか？」
駄目なんて、言える訳ないじゃない。
答える代わりに、アタシからの口付けを送った。
ぐったりしたアタシは、ベットへ沈み込んだ。
とてもじゃないけど、こんな状態じゃ、帰れない。
「ミミさん、お家、電話するでしょう？」
ベットの中にいるアタシに向かって、光子郎くんはコードレスの子機を渡してくれる。
…なんだって、そんなに元気なのよぉ。
恨めしそうな顔をしてにらんでいると、にっこり笑って、
「昔から、体力ないのは、変わりませんね。」
！！…今日のは、光子郎くんが…その…激しすぎた…からでしょ！！！
と、言いたくても、どう返されるかわかってるから、言わない。
何が、どう、激しかったんですか？とか、聞き返されるに決まってるもの。
光子郎くんのやきもちのせいで、ひどい目にあったわ。
でも、そんな事言ったら、もっとひどいことされそうだから、言わない。
シャツを着た光子郎くんは、台所のほうへいく。
飲み物でも取りに行ったのかな？
やっぱり今日は泊まる事になってしまった。
小さくため息をつくと、電話の子機を握り締めたまま、アタシはママへの言い訳を考えはじめた。
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